明治東京を舞台に
友人に勧められ、早瀬乱「三年坂 火の夢」を読んだ。第52回江戸川乱歩賞受賞作である。
舞台は市電が走る前の明治東京。
東京逓信管理局の地図はまだなく、軍が作成したと思われる地図を片手に、三年坂を探し回る青年……。三年坂には兄の、そして父の死の真相が隠されている。
いやぁ、色んな坂が出てくる。
時代考証も徹底していて、説得力があった。「さすが、乱歩賞受賞作」と言いたいところであるが、都市形成の要が、明治東京の描写に欠けていたように思われる。それは下水道の整備状況のこと。自分マルも調べ切れていない処であって、それをこの作品に求めるのはお門違いであるのだが。
神田下水が出来たのが明治17年。三河島下水処理場が出来たのが大正11。明治期はまだ下水道が完備されていない状態であったっと思うのだが、その辺の描写は無かったようだ。
――それは良いか。市電の開通に向けて、整地/均される坂の話は在った(ように思う)。概ね及第点の時代考証だと思う。
しかし、いただけないのは最終章の謎解き。
これこそが推理小説の醍醐味であることは承知しているのだけれど、説明臭くていけない。好みの問題だけれども。
まぁ、これを勧めた友人は、確かに僕の好みを判っている。
楽しく読めました。
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