蕎麦屋について思うところ @ 「そば助」
「そば助」についてレビューしようとして、はたと止まった。
蕎麦屋について思うところがある。これを述べておかないと「そば助」をうまく紹介できない気がする。
拙ブログで小出しに言っているけれど、蕎麦屋は店としてのベクトル/傾向が幾つかに分類される気がする。こういった論を展開するのは、自分だけではなく他にも見かけるので、さして独創的なものではない。あしからず。
その分類というのは、町蕎麦系、本格系、老舗系の3系統に分け、業態としての分類として立ち食い系、チェーン店系などがある、と云ったものである。
もう少し具体的に言うと……
町蕎麦系----大衆的なお蕎麦屋さん。丼物なども扱っている。単価も庶民的。まさに地域密着型であり出前を行うお店もある。また親から子へと店が継がれていく傾向がある。
本格系----蕎麦自体を味わってもらうことを信条とし、ひき方・打ち方、はたまた蕎麦つゆなどに拘る。単価は比較的高め。蕎麦のコース料理を提供するお店もある。蕎麦好きが嵩じ脱サラしての開業といったケースが散見される。もちろん、三たて(挽きたて,打ちたて,茹でたて)を基本とするので、出前に応じることはまずない。
老舗系----“暖簾”に重きをおき、代々継がれてきた蕎麦屋。藪、更科、砂場など、その系譜が辿れる店舗が多い。
この3系統/ベクトルが完全分離しているわけではなく、傾向があると云う意味あい。老舗だけれども丼物もあって、出前サービスも行う、とか。老舗と捕らえるに充分な歴史がある上に、本格蕎麦も提供する、とか。はたまた、庶民的安さなのに蕎麦は超拘った本格的だとか。
立ち食い系----はどちらかというと業態の違いで、ファーストフードたる蕎麦食を提供するお店。茹でおきした蕎麦を出したりなどしても、反則技に取られることはない。駅構内にある蕎麦屋は基本このスタイル。
もちろん、立ち食い系であっても、先の3ベクトルを内包していることがあるだろう。
で、こういった分類に修まらない蕎麦屋が出てきている。
Cafeの構えで超本格蕎麦を出す「休日や」@高井戸も新しいスタイルだと思うが、蕎麦自体は伝統的なそれだった(自分は本格系として評価する)。しかし、今、述べようとしているのはそういった店舗のスタイルではなく、献立としての蕎麦が進化したような……、全く別物のメニューになってしまったような……。
昔、「三朝庵」が“カレー南蛮”をあみ出したときのインパクトがどれほどであったのか知れないが、蕎麦屋はまた新しい領域を開拓している。
自分はそれら蕎麦屋を New Wave系 と呼んでいる。
有名どころでは三田の「à la 麓屋」。自分がかつてレビューした中では、恵比寿「蓮」の“肉そば”や、両国「業平屋」の“とまとそば”、新御徒町「与之助」の“黄金笊”に New Wave の鋭いベクトル感じてしまう。
これはハード・ロックを踏み台にヘヴィ・メタルが台頭してきたような、あるいは、グラム・ロック、パンク・ミュージックを経てブリットポップが醸造されたような(自分の得意なロックミュージックに喩えると、そんな)イメージで、フレンチやイタリアンなど蕎麦意外の手法に触発されたあたらしい蕎麦食の地平が拓かれようとしている。
従来、蕎麦と云えば、醤油・みりん・砂糖などで造る“返し”と鰹節・昆布などで摂る“出汁”が基本ベースにあった。しかし、New Wave系 は、そこを押さえつつも柔軟な発想で飛び越えて、醤油なしの汁だの、香り付けにラー油やオリーブオイルなどを使ってくる。
これは、どういったタレ(返し)をどういったスープ(出汁)で割るか、そこに合わせる香り油は何が良いか、麺の細さは? と、構成を練るラーメンに似ている。
フレンチ、イタリアン、そしてラーメン文化の洗礼を受けた新しい蕎麦の形態に思える。
(うどんでも同様なムーブメントは形成されつつあるだろう)
―― そう、「そば助」は New Wave系の外連味が存分に味わえる蕎麦屋である。
業態としては、24時間営業の立ち食い蕎麦なのだが、究極を謳う塩出汁をウリに、“汁なしまぜそば豚天玉”とか、にんにくを効かせた“玉潰し・極め塩とりそば”など、ラーメンのごときメニューが並ぶ。
メニュー代わりに券売機を撮った。
ちなみに券売機は上外観写真の左側の扉の向こうにある。浅草通りの扉から入ると券が買えない。左衛門橋通りから入るべし。
立ち食い蕎麦屋さんらしく、トッピング用に複数種の天ぷらがある。
色紙が見切れている。上には有名人の色紙がずらっと並んでいる。
豚肉はやまと豚というものを使用している。神奈川県平塚市のフリーデン社のもの。自分は未食だが、安全・安心かつ旨そうな豚である。
夏の日のこと。
冷やしそばで一番人気という一品をいただいた。
■冷やし極め塩とりそば
ボイルされた大ぶりの鶏肉がごろごろと転がっている。
刻み葱の周りにうっすらと褐色に見える物は魚粉。
極み塩出汁に鶏の脂も廻って、重層的な旨みとなっている。
途中で、卓上にあった特製胡麻唐がらしを少し入れてみた。
いっそうパンチのある味わいになった。
冬の日。
■貝だしそば
券売機のボタンには“溢れ出る魅惑のエキス”なんてキャッチが付いている。
小鍋にベビーホタテを入れるところから見ていた。お店ホームページあるように、一杯ずつ丁寧に作られている。
滋味深いスープになっている。塩出汁でないとこの風味は出ないだろう。
豚肉を使ったメニューも食べてみないといけないな。
24時間営業だし時間を気にせずに行ける。
散歩の帰りにでも、小腹が空いていたら寄らせてもらおう。
御徒町にもある。
「そば助」の回を借りて、変な蕎麦屋分析を披露してしまったな。(恥ゞ
New Wave系、伝わったかな?
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